機械の音が心地いい
自転車散歩で、老津町(おいつ)の鉄工所の横を通りかかったときにプレス機で鉄を叩く音や、火床(ほど)から噴き出す炎の音にノスタルジーを感じてしまう。静かな散歩が好きだと言いながら、車の騒音のような人工音は大嫌いだと言いながら実は工場の機械の音が嫌いではない。小学生の頃に、父の勤めていた会社の製鋼工場、圧延工場の見学をしたときに感じた迫力、また、私自身も大人になり、製材の仕事をしていたことから機械の出す騒音に愛着のようなものがある。
今でこそ風の音ばかりが聞こえる駐車場で巡回したり、家では独り絵を描き、音楽もクラッシックばかり聴いているが、町工場の機械音に対する愛着はやっぱり根っからの職工なんだなと悟る。
製材工場での記憶が甦ってくる。大小さまざまなモーターの音、コンプレッサーの音、巨大なローラーに板が流れる音、チェーンの音、油圧機械を動かす音、バンドソーの回る音、丸太を挽く音。これらの音が混ざり合って大きな騒音になり、それが体の芯にまで染み付き、その騒音が時に心地よかったりする。
勝手なもので毎日毎日日常的に自宅まで聞こえていたらそれこそ迷惑な騒音ではあるが、静かな自転車散歩の途中に聞こえてくる工場の音が心地いい。自転車を漕ぐごとにその音は遠ざかり、辺りに反響する。遠ざかるごとにこだまする工場の音に憂愁が漂い、その後に訪れる静寂は、夕暮れ時の寂寥感と似たものがある。
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